年間80万人が訪れる大分県竹田市直入町の「長湯温泉」が、公正取引委員会や県の指導を受け入れ、約20年にわたって掲げてきた「日本一の炭酸泉」の看板を下ろすことになった。きっかけは「日本一の表記に数値的な裏付けがない」という、ある温泉愛好家の指摘。炭酸泉を目玉に地域振興を図ってきた地元は「もともと企業や学者のお墨付きを得て使ってきたキャッチフレーズ」と反発していたが、混乱が続けば「一段とイメージを損ないかねない」と苦渋の決断をした。

 長湯温泉の炭酸泉は1985年、全国各地の炭酸泉成分を分析した入浴剤メーカーでもある花王(東京)から「全国最高の炭酸泉」との評価を受け、一躍脚光を浴びた。約7万人だった年間観光客は80万人に増え「長湯の奇跡」と呼ばれた。

 ところが、関西の温泉愛好家が昨年8月以降、インターネット上などで「長湯のいくつかの温泉施設は環境省が定めた炭酸泉基準値(湯1キロ中の二酸化炭素含有量が1000ミリグラム)を満たしていない。日本一は景品表示法上の不当表示に当たる」と主張。公取委や長湯温泉旅館組合に撤回を求めた。

 この指摘を受け、長湯温泉は約50カ所の温泉成分を再調査。分析結果の提出を受けた大分県景観自然室によると、基準を満たさない施設が少なくなく、県は温泉街や道路沿いに掲げた看板やホームページ上の「日本一の炭酸泉」の表現を自主的に削除するよう地元に要請した。

 地元は「日本一の定義は単に二酸化炭素濃度が高いというだけでなく、二酸化炭素濃度、温度、湧出(ゆうしゅつ)量の3要素を総合し判断したもの」と、修正に抵抗。しかし、長湯温泉が会場となる「源泉かけ流し全国温泉サミット」の開催を来月に控え、混乱回避を優先した。竹田市や温泉旅館組合、商工会など関係団体は、代表者連名の文書で指導の受け入れを表明。ただ「日本有数の炭酸泉であることは変わりない」と強調している。

■間違いとは言い切れぬ 温泉に詳しい由佐悠紀・京都大名誉教授(地球熱学)の話

 長湯は高温でありながら、炭酸泉基準値を超す源泉が複数ある温泉群。規模や湧出量を総合的に判断すれば「日本一」が間違いとは言い切れない。